今さらながら1年前の『小説新潮』の「食欲vs性欲」特集を読んだ。
性欲の方ではあまりそういう傾向はなかったけれど、
食欲パートの短編はどこか性をにおわせる作品が多かった。
その中でも、雪舟えまさんの「ちしゃの旅」がとても好みだった。
児童小説の書き手でもあり、歌人でもある雪舟さんの文章は、
いつも光にあふれていて素敵だ。
光、温度。
わたしたちを包むものたち。
心と体の有り様は不思議な「学校」が教えてくれる。
──
「どうして心はみんな違うのですか」
「さまざまな想い、さまざまな経験が生まれることを、この宇宙は望んでいるからですよ。(略)」
──
姿は似たりよったり、でも、心はみんなそれぞれ。
それぞれ、そうわたしたちが経験することが、
宇宙を作ることだなんてロマンチックな真実。
別にこのブログで紹介するにはエロが足りないような気がしますが、
この作品の中にでてくる食べ物の手触り、無我夢中で食べる幸福感は官能に通ずるものがある気がして……
自己と他者と、自分たちではどうにもならないことと。
主人公の生物「ちしゃ」とは、「知舎」なのかな。「知者」なのかも。
とても可愛らしいお話。